オンラインMBAで単位を落とす人たち

UoPeople MBA

ピープル大学MBAの単位取得は、要件を満たす課題さえ真面目に提出していれば、それ程難しい事では無いと思います。

しかしながら、私は9コース目に受講した「プロジェクトマネジメント」では、コースインストラクターが7週目の始めに、「このままでは半分以上の生徒が単位を落とす」という全体告知を行い、生徒達は右往左往する事となりました。

いったい何が起きたのか、この記事に纏めたいと思います。

ピープル大学 MBAの単位認定基準

まず、ピープル大学 MBAの単位認定基準をおさらいしておきます。

ピープル大学には、単位た取れる本科生(Degree Seeking Student)と、本科生になるための基礎コース(Foundation Course)があります。

それぞれコース修了基準は異なり、以下の通りです。

基礎コース(Foundation Course)

  • 最初に履修する3コースのそれぞれで、GP 2.67(80-82点)の成績を修めること。
  • 最初の3コースでBグレード未満があった場合、最大4コースまで履修を行い、4コースのCGPA(累積成績平均点)で2.67以上の成績を修めること。

本科生(Degree Seeking Student)の修了要件

  • 合計36単位、12コースを修了すること。
  • 8つの必修コースを修了し、各コースでGP 2.00(73-77点)以上の成績を修めること。
  • 3つの選択コースを修了し、各コースでGP 2.00(73-77点)以上の成績を修めること。
  • キャップストーン・コースでGP 3.00(83-87)以上の成績を修めること。
  • 全コースのCGPAが、2.50(約80点位)以上であること。
  • 全コースを離籍期間を含め、25学期以内(5年以内)で修了すること。

基礎コースでいきなり80点以上と言われると、結構高いハードルに見えるかもしれません。しかしながら、評価基準は予め明示されており、それに沿って採点がなされますので、実際には個別課題では満点を取れる事も珍しくなく、逆に悪く評価されても、70点位までで評価されているように感じます。

従いまして、題意に沿って評価基準を意識した課題を全て提出してさえいれば、コースを落す事はあまり無いように感じます。

あるコースで実際に起こった出来事

ルールに厳しいインストラクター

私が9コース目に受講した「プロジェクトマネジメント」のコースインストラクターは、非常にルールに厳格でした。

波乱の発端は、Discussion Assignment (DA) という、Moodleの投稿掲示板にお題に沿ったエッセイを投稿し、お互いに採点し、コメントしあうという課題で、コースインストラクターが設定した課題投稿のガイドラインです。

通常、DAは与えられた課題に対し、Introduction, Body and Conclusionのエッセイ形式で記述する生徒が多いです。単語数について、基礎コース(Foundation Course)では250~750単語などの制限がつくものが多いですが、本科生(Degree Seeking Student)のコースでは特に指定がないものが多く、結果、1,000単語を超える投稿もチラホラ出てきます。

本コースでインストラクターが設けたDFの課題投稿ガイドラインは、以下の通りです。

  • 課題質問に対し、明確な一問一答形式で回答すること(回答例も明示)
  • 同僚マネージャーや上司(CEO)との会話であると想定して書く事
  • 単語数は最小 250、最大 500(+ 10%バッファ)まで

聞く耳を持たず、思い込みで行動する生徒たち

このDFガイドラインは、全クラスメートに最初の週に全体通知で案内されましたが、2週目で完璧にガイドラインを満たした投稿は、28人中1人だけでした。その後、コースインストラクターは繰り返しガイドラインを守るよう、投稿への返信や全員への通知で呼びかけましたが、6週目段階でガイドラインに従った生徒は26人中6人であり、残りの80%未満の生徒は、ガイドラインを無視した投稿を繰り返しました。

ガイドライン違反の例としては、一問一答形式のテンプレートや文字数の制限を無視し、自由形式で文字数を気にせず投稿するものが多かったですが、内容もリファレンスした資料の事実関係の説明に終始する無難なものが目立ち、設問に対して事実関係に裏付けられた個人的見解を適切に述べている投稿は、あまり多くありませんでした。

そもそも、ピープル大学 MBAでのDF課題は、Yes, Noで割り切れるものが少ないので、そのような回答になる気持ちは十分にわかるのですが..。

恐怖の落単予告

そして、生徒がDF投稿ガイドラインを無視し続けた結果、インストラクターの指摘や言葉も厳しくなっていき、7週目の開始時に全体アナウンスでは、これからDFのピアアセスメントのダウングレードを予定している事と、それにより半分以上の生徒が不合格になるという、衝撃の全体告知がありました。インストラクター曰く、これだけ「話を聞かない」クラスは初めてとのこと..。

これからいくつかのDFのピアアセスメントをダウングレードする予定です。それにより、50%以上の生徒がコース不合格になります。

私はこれまでピープル大学で3年以上指導してきましたが、これだけ「話を聞かない」クラスは初めてです。

更に、6週目に提出したグループワークは、全グループリーダー宛てに、以下の通達が出され、6グループ全てのグループワーク課題に、一律60点が付与されました。

多くの生徒はコース要件と提出ガイドラインにまったく従っていないため、コース不合格の状態にあります。そのため、グループワークが救済策となります。

具体的なグループワークの改善コメントを別途送るので、チームメンバーが一丸となって課題を修正し、再提出してください。

ちなみに、ピープル大学での単位取得のためには、最低70点をクリアしなければなりません。グループワークの配分は全体の25%あるので、それを60点にされるのは大変な痛手です。

更にこれからDFダウングレードが予定されているとなると、確かに単位を落とす生徒が結構出そうだなと、ここで皆がリアルに感じ始めました

落単に怯える生徒の反応

ピープル大学のコースでは、生徒が任意で非公式のWhatAppグループを作り、そこでお互いに情報交換をする場合があります。本コースにもそれがあり、7週目にインストラクターの衝撃の告知があった後は、蜂の巣をつついたような騒ぎになりました。

寄せられたコメントの90%が感情的、批判的なものであり、一部冷静な対応を呼びかける意見もありました。

ちなみに、自分たちがDFのガイドラインを無視し続けた事に言及したコメントは、一つもありませんでした。

感情的・批判的
感情的・批判的
  • 彼女のように生徒を脅すインストラクターがは初めてだ。
  • これは非常に悪いことだ。彼女がどれだけ特別なのか。それを許すべきではない
  • 沈黙はせず、主張しよう。そうしなければならない。そうでなければ、沈黙は受け入れることを意味する。
  • 彼女は心理的な葛藤を抱えているようで、残念ながら我々は被害者だ。
  • 私はプログラムアドバイザーを通じてと、コース評価を提出することで、彼女を直接学科に報告しました。
  • 私たちはグループとして団結し、この状況に立ち向かわなければならない。私たちのために、そしてクラスメートのために。
  • このグループワークの採点には本当に問題がある。筋が通らないし、納得できない。グループワークの主な目的は何か?
冷静
冷静

彼女が約束した改善コメントを待ち、その後、問題を効果的に解決するための戦略を練りましょう。

コースの結末

だいぶ荒れたプロマネコースでしたが、その後、インストラクターからは詳細なグループワークのフィードバックが、具体的な改善提案と共に連絡されました。

我々のグループには本職のPMがいたため、私から見て、最初に出した課題の完成度は高いように思ってましたが、コースインストラクターの指摘は、このプロジェクト計画ではお客は買わない、という直接的な意見と、何故そう思うか、どうすれば点数が上がるかが具体的に示されており、フェアな内容であると思いました。

恐らく、コースインストラクターこのような対応をするにあたり、提出された課題を十分に読み込み、指摘事項をじっくりと検討したものと思われます。

最終的に、課題の再提出を行ったグループは、6グループのうち我々を含む4グループでした。残り2グループがどのような議論を行い、対応をしたかは不明です。

私はと言いますと..。おかげさまでDFは全て満点評価でダウングレードもされず、再提出したグループワークは、おかげさまで無事に98点を獲得できました!

だいぶハラハラしたコースではありましたが、本来のプロマネの勉強以外にも、様々な人間観察ができ、多くの学びを得たコースでもありました。

教訓

  • コースの運営や採点には、コースインストラクターが大きな裁量をもっています。彼らの指示には従いましょう。
  • コースインストラクターの指示がわからなかったり、違和感を感じた時はその時に確認しましょう。勝手な解釈で進めると無視したと思われ、後で思わぬトラブルに発展する恐れがあります。
  • ネガティブな発言に、その時の感情で安易に同調してはいけません。人の意識には無意識にバイアスがかかります。周囲に同調して誰かが悪いと思い込んでしまうと、その人からの大切な指摘を見落としたり、自分で考えて内省する力が弱まります。その結果、損をするのは自分です。

おまけ:「共通の敵」で芽生える仲間意識(バランス理論)

本コースのWhatsApp グループチャットでは、コースインストラクターへの反発から良くも悪くも生徒同士が一体となり、具体的な行動を起こした現象は印象的でした。

ピープル大学では生徒同士のピアアセスメントやグループワークがあり、ここではお互いの価値観や進め方の違い、評価認識から、生徒同士がギクシャクするケースは何度か見てきましたが、「不当な評価をするコースインストラクター」という共通の敵が現れた事により、生徒同士が同盟関係を組んで行動を起こしたケースは初めてです。

よく映画などで、地球外生命体からの侵略を防ぐために、通常は微妙な関係にある国同士が協力し合い、エイリアンやっつけるという、アレですね。

ちなみに、この嫌いな人や嫌いな事柄が同じという時に相手を好きになる、もしくは、好きなものや趣味が同じな人を好きになる心理は、認知的均衡理論(バランス理論)で説明できるようです。(心理学・心理職ネットワーク, 2018)

人々を結束させたいときのテクニックとして、共通の敵を作るのは手っ取り早く、効果があるのかもしれませんが、できれば、共通の目標などの、ポジティブな方向で使いたいものですね。

リファレンス

心理学・心理職ネットワーク. (2018, July 6). 認知的均衡理論(バランス理論)、認知的不協和理論、認知的斉合性理論. https://cp-info.net/cognitive-consistency-theory/

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