私は50歳からピープル大学(UoPeople)MBAで学習を始め、働きながら2年半で修了しました。30年近くIT業界でキャリアを積み、現在はDXソリューション事業のセールス&マーケィング部長として従事している経験から、「オンラインMBAは本当に役に立つのか?」という問いに対して、実体験に基づく考えを共有したいと思います。
キャリアの転換点とMBA取得の決断
私は49歳でITベンチャーから歴史ある日本企業に転職し、その中でDX新規事業の営業組織を立ち上げるという、新しい挑戦を始めました。そこで直面したのは、これまでの業務で身に着けた知識と経験だけでは、新たなフィールドで力を発揮するには不十分だという現実です。DXによるビジネスモデルの変革や、新規事業の立ち上げに伴う組織改革には、より広い視野とビジネスの体系的な理解が必要だと痛感しました。
オンラインMBA選択の理由
MBA取得を考える際、最初は国内の通学制MBAも検討しましたが、現実的な制約から断念せざるを得ませんでした。プレーイングマネージャーとして日々の顧客折衝とチームマネジメントをこなす中で、平日の決まった時間に通学することは極めて困難だったためです。
そのような中で、ピープル大学のオンラインMBAプログラムが目に留まり、完全オンラインの学習形態は、不規則な勤務時間の中でも自分のペースで学習を進められる利点があると感じました。
また、私は仕事で英語を使用する機会があり、入学前のCASECスコアは793(TOEIC換算で約870)ありましたので、英語での学習もなんとかなるだろうと思ってました。さらに、MBA修了までの総額が4,860ドル(2025年1月時点)という費用の安さも、大きな決め手となりました。
ライブ授業が無くても大丈夫なのか?
結論から言うと問題ありません。私はかつて、2000年頃に中小企業診断士の一次試験に合格してますが、それから約25年が経過した時点でピープル大学MBAで学んだ経営理論やフレームワークには、かなりの相関があり、全く新しい知識というのは、思ったほど多くありませんでした。つまり、MBAで学ぶインプットとしての知識は、実は一般に公開されているものがほとんどではないかと思います。
尚、マーケティングに関しては2000年当時とは大きく異なり、これはネットやモバイル環境の発達が影響していると思いますが、かなりアップデートされている印象を受けました。しかしながら、それでもネットやYoutubeを見れば、日本語でも詳しく解説されている情報もたくさんありますので、ピープル大学の読書課題だけでは理解しにくい点でも、それ程困る事はありませんでした。
これらから感じる事は、MBAで学ぶ重要な事は、理論やフレームワークそのものではなく、むしろ、それらの活用方法(アウトプット)ではないかということです。
例えばゴルフが上手になりたいと思ったら、まずはスイングの基本原理を理解し、自分のスイングを客観的に分析しながら練習する事が、基本的な上達への道だと思います。また、英語学習においても、単語や文法を学ぶだけでなく、実際に、読む、書く、聴く、話す事をしないと上達しません。
経営理論やフレームワークもこれと同じではないかと思います。つまり、理論やフレームワークを知っているだけではあまり役に立たず、その使い方を練習(アウトプット)して身に着ける事で、現実世界の問題発見や対処を考えるための論理的思考への活用として、初めて使える知識になるのだと思います。
ピア・アセスメントで適切な学びが得られるのか?
ピープル大学 MBAの大きな特徴の一つに、読書課題とそれに基づくエッセイの作成、そして学生同士でのピア・アセスメントがあります。
この学習メソッドは正直に言うと、最初は大変不安に思った要素であり、「生徒同士の評価で適切なフィードバックが得られるのか?」という疑問がありました。実際、ピープル大学のMBAには入試が無く、要件を満たせば誰でも入学できるため、生徒の質には大きなバラつきがあります。
しかしながら、ピア・アセスメントを通じて多様なアウトプットを見る事は、自分自身の知識の理解や捉え方の軌道修正ができる利点があると感じました。
具体的には、それぞれのビジネスには国や業種、組織などの違いや、その他にも様々な個別事情が無数にありますので、経営理論やフレームワークを実務で使いこなす事は、決して簡単な事ではありません。
しかしながら、ピープル大学MBAの筆記課題(エッセイ)では、生徒は共通の読書課題に基づき、共通のケーススタディや、現実世界の出来事を題材としてアウトプットをします。これら、同じ前提条件に基づいたアウトプットを相互比較する事は、それぞれの理論やフレームワークの解釈や活用の仕方の違いを見る事であり、慣れてくると、次第に自分なりの解釈や考え方が身についてくるものだと感じる事ができました。
これら、ピープル大学MBAのピア・アセスメントによる、実践的な知識の獲得ステップを表現すると、以下の通りになります。
- 読書課題で理論やフレームワークの基本を理解する
- 課題に基づきエッセイを書く(アウトプット)
- 自分の理論やフレームワークの視点や解釈を、他の生徒のものと比較する
- コースインストラクターによる、自分や他の生徒への公開フィードバックを確認する
- 必要に応じ、理論やフレームワークの自分の理解や使い方の軌道修正をする
まとめ
働きながらのMBA取得は決して楽な道のりではありませんでしたが、私はピープル大学のMBAプログラムを通じ、経営理論やフレームワークの体系的な理解が進み、実践的な問題解決能力も向上し、経営者視点を獲得する事ができたと感じています。
その一方、得られた知識の実務応用には、まだまだ改善の余地があると認識していますので、MBA修了後も、日々の業務の中でそれらMBAの学びで得た事を実践し続ける事で、継続的な成長を目指しています。
不確実性が増すビジネス環境において、ピープル大学のオンラインMBAプログラムは、学び直しをしたい社会人にとって、意欲と自己規律があれば、経営理論と実践を結びつける、大きな価値を提供すると考えています。